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木村俊昭

vol.1 農林水産省大臣官房政策課 企画官 木村 俊昭 氏
木村 俊昭 氏 プロフィール
1960年生まれ。北海道出身。1984年小樽市入庁後、財政部、議会事務局、企画部、総務部、経済部を経て、産業振興課長、企画政策室主幹(プロジェクト担当)。2006年4月から内閣官房・内閣府企画官として、地域再生策の策定・推進、「地域と大学との連携」、地域再生制度事後評価、政府広報活動のほか、地域再生に関する調査研究を担当。地方再生戦略では九州圏・沖縄県を担当。2009年4月から農林水産省大臣官房政策課に異動となり、企画官として地域の担い手育成、地域ビジネス創出など、主に農林水産業を中心とした「地域と大学との連携」を担当。地域活性化伝道師(国)地域活性学会理事。
◇ 取組活動例
自治体総合計画、広域行政、産学官連携による新製品・新技術の共同研究開発、産業クラスター事業、異業種交流・連携事業、学生起業家の育成、ものづくり職人活動、職人展、全国・世界職人学会の設立協力、制作体験工房、新産業創出、地域資源を活用した新製品開発、起業家創出と育成支援、キッズベンチャー事業の企画・推進、経営相談窓口の開設(金融・創業・経営革新等の相談)、自治体連携(産業振興関連)、地場企業と誘致企業との連携の場づくり(新製品開発)、企業立地誘致活動、地域情報化、土地利用、新エネルギー事業などの企画・実践ほか
(インタビュアー:船井総合研究所 岩崎 剛幸  文:株式会社トビムシ 古川大輔氏)

一期一会。初心を忘れず一瞬一瞬を真剣に生きたい

岩崎: 本日はお忙しいところお時間をいただきまして、ありがとうございます。木村さんとは5年前に知り合いました。小樽で講演をさせていただいて以来のお付き合いです。「こんな人が行政にいたんだ!」と衝撃を受けたことを今も鮮明に覚えています。
先日のNHKプロフェッショナル(5月19日放送)「"ばかもの"が、うねりを起こす」を拝見させていただきましたが木村さんらしさがとてもよくでていた内容でしたね。私は再放送も見てしまいましたが(笑)。

木村 俊昭 氏(以下木村): ありがとうございます。

岩崎: このたび、船井総研で「情熱経営フェスタ」というイベントを行うのですが、そこで情熱をテーマに対談をさせていただいております。地域活性化のプロフェッショナルとして、小樽市役所職員時代、そして、内閣官房・内閣府企画官から農林水産省大臣官房政策課企画官に異動したわけですが、今までの中で、木村さんが大切にしている基本的な考え方、仕事への情熱のスタンスというものは何でしょうか?

木村: 「一期一会」ですね。そもそも人生は限られた時間しかないんです。一日24時間ある中でどう生きるか。その中で、出会った人を大切にしていく。それが第一だと思います。目標を定めても課題が何か分からず突き進んでいるようでは何も変わりません。継続、進化できるような仕組みを作るために、初心を忘れず、一瞬一瞬を真剣に生きたいと思っています。

地域の中で業を起こすことを前提に地域全体を設計することが大切。

岩崎: 木村さんは地域の中で仕事を作ることをやっていらっしゃいますが、その中で大切にされていることとは何でしょうか。

木村: まずは地域活性化の目標をしっかりと定めることです。地域のなかで、そのまちをどうして行くか、誰が何をするのか、いつまでにどうするのか、そういう「仕組み」を作っていくことが大切と考えます。
例えば、地域の大学が、連携して企業を作ろうとか、行政が主導となって起業家を支援しようとかよくやりますが、実際はセミナー数回やって終わりといったところが多いように思われます。それだけでは起業となりません。地域のなかで業を起こすことを前提に地域全体を設計することが大切です。
少しでも地域活性化に繋げていきたいですね。

岩崎: 一公共機関としてでなく、行政はさまざまな人達や産業を結びつけるハブのような働きが大事になるということですね。

木村: そうです。地域活性化を考えると、企業誘致でまちに企業がド~んと来てくれればいいんじゃないの?と思う人もいるでしょう。
でも、具体的な地域経営や仕組みづくりがなければ企業誘致が効果的でない場合もあります。固定資産税を減免して誘致したが、結局のところ地域にとってそれがよかったかどうかという話になることも多々あるのです。
やはり、効果的な地域資源が何なのかを見据え、行政だけでなく、地域全体で議論する「場」をつくり、課題を整理し、政策案を策定し、優先順位に応じて実践、そして継続、進化させることが重要なんです。

岩崎: やはりその仕組みが必要なのですね。

木村: システム化といいますが、そんな漠然としているものではありません。地域が抱えている問題の原点は、所得が増えず、税収が上がらず、地域経営が成り立っていないということがありますね。
技術があるからその技術で何かを作る。作ったからそれを売ろうとする。でもそれは違うんです。お客様のニーズがあって作ったのではないから、売るのに苦戦するわけです。
併せて商品の付加価値づくりも益々、重要となってきます。

ブランド力・インパクト・規模・そして産業と地域の人を結びつけ、継続・進化させることが、地域活性化につながる。

岩崎: 作り手(売り手)発想ではいけない。買い手(ニーズ)発想ですね。そしてやはりブランドが必要になってきますね。

木村: ブランド力も重要です。地域へのインパクト、規模感も大切です。例えば、地元商店街が連携して東京で物産展を5社~10社で行う場合が多くみられます。
毎年この時期にやってるから、本年もやりましょうよって、惰性的に、そのレベルで続けていても本質的には活性化につながらないわけです。

岩崎: 確かに各地でさまざまな物産展などが行われていますが興味の湧くものは少ないようにも思います。

木村: その物産展を行うことによって、会社が何社、何世帯の方に関わることなのか。その事業を推進することでどれだけの地域の皆さんの所得向上に貢献できるのか?ということが重要となります。
一企業だけの話に終わらずに、どういう産業や人を結び付けていけるのか、そこを基準に考えなければ、継続、進化しないんです。
よって、物産展の場合、もっと人が集まる規模感のある県の物産展に出展していただく方がいい場合もあるわけです。

岩崎: 産業のイメージを前に出しすぎるのではなく、結局、どれだけの家族が関わるのかというのは説得力があります。

木村: 例えば観光でもそうです。ある地域に人口が5万人いるとして、そこで地域活性化をしようとして行政が主導になって観光振興を行ったとします。結局、観光関連企業はまちには数社しか関われないというのではインパクトが小さいといえます。
やはり、実施する事業はできる限り、まちの主たる産業に結びつける必要があります。それと地域の担い手、人財づくりが重要ですね。

いい人財を評価する仕組みが必要

岩崎: 番組の中でも炭焼きのおじいさんに「今までやってきたことを残すことが大事なんです」と語りかけていましたが。

木村: そうです。実は地域にそういうすばらしい人財がいるわけです。ですが、いい人財を評価する仕組みが意外にないんです。当の本人は自分の意思があって、軸があってやっている。地域の中の人からは評価されないから「俺はこれでいいのか?」と悩んでいる。
  自分で負のスパイラルに入ってしまうんです。私がお会いして「すばらしいことを実践されてますね。」ということを伝えると安心されるんですね。外の視点、比較した視座を見せるということも必要です。
例えば、地元の高校生を大切に育てる仕組みづくりとして、大学と連携したプログラムづくりも考えられます。

自分たちは地域の重要な一員なんだという気持ちが地域活性化へのモチベーションに繋がった。

岩崎: そういう意味で、地域を活性化させるためには情熱を形にする必要があると思いますがどのようなことをやられたのでしょうか。

木村: 例えば、小樽時には「スナックのママさん作戦」をやりました。ママさんに地域振興、観光大使のような役割を担ってもらうという取組みです。
これの一番のポイントは、彼女たちのモチベーションが高まったということです。自分たちが「地域づくり」に関わっているんだという自負心が生まれました。

「スナックママさん作戦」:
小樽に観光を含めゴルフをしに来た人がいるとします。以前は「明日ゴルフの後に1~2時間ほど時間があるけど」と言ってもスナックのママさんは充分に観光スポットを案内できないことも見受けられました。
そこで、「何ボ飲んで歌っても3000円ポッキリ」という安心のスナックマップをつくり、それぞれのママさんが小樽に遊びに来た観光客に、どこを観光したらいいですよと伝えられるように勉強していただきました。
その3000円で飲み放題のスナックマップを作ったことで、観光客の方もハシゴするようになったわけです。
このように単にママさんが観光大使の役割を担ったということだけでなく、まちづくりの重要な一員でもあることが理解いただけたものと思います。

岩崎: 自分たちが参加しているんだという気持ち、一員なんだということ、それがモチベーションに繋がるんですね。

木村: まちづくりの一員であり、重要な役割を担っていただいているということが大切です。口コミも、とても大切な要素です。

人脈を増やすには、人を好きになること、相談できる人を作ること、人づきあいを大切にすることが基本。 木村 俊昭 氏

岩崎: 以前、人脈を増やすにはどうしたらいいか?と私が訪ねたところ「人を好きになればいいんですよ」と木村さんがおっしゃっていたのが凄く記憶に残っています。

木村: そうですか。人を好きになることは基本と思います。またその上で、人を動かすためには、人脈を間接的に活かさせていただくこともありますけどね(笑)。
例えば「あの人、あなたのことをこう褒めてましたよ~」みたいなことを言うわけです。嘘ではだめですが。やはり、自分ひとりだと限界があるわけですからね。私も色々と相談に乗ってもらう方もおりますし。

岩崎: 色々な人と繋がってこそという木村さんの仕事のスタイルが浮かんできます。

木村: 今の若い方には相談する相手が少ないよう思えます。父母にも上司にも友達にも相談できないこともありますから。その際には、やはり、相談できる人を作ることが肝心です。そのためにも常日頃から人づきあいを大切にすることですね。それには人を好きになること、それが基本じゃないでしょうか。

岩崎: 木村さんなりの人脈の広げ方というのはあるんですか?

木村: 行政職員は恵まれているんです。何がといいますと、まず1回は誰でもあってくれるんです。名刺に信頼がありますから。しかしですね。2回目はその人次第なわけです。勉強もしないとなりません。それに地域の人をつなげていく努力とその仕組みができなければ続かないんです。

岩崎: 名刺の力と自分の力。なるほどですね。

木村: お陰様で番組放映以降、今まで以上に地域活性化の相談に乗ってくださいというメール、電話や手紙がたくさん届いてます。テレビを見て自信がつきましたといってくださった行政マンも多数います。また、いくら企画書を出しても通らないが、頑張ってみるとの連絡もいただいてます。

企画そのものに本当に筋が通っているか、本当に必要であるか」自ら問いかける。お客様、生活者の視点に立って考える。それこそが、関わる皆さんが楽しい「仕組み」を作るための原点。

岩崎: 木村さんご自身はほとんど企画は通してこられた、実現してきたのでしょうか?

木村: 周りの皆さんの協力もあり、企画は実現してきました。私は「企画そのものに本当に筋が通っているのか」を自ら問いかけるようにしています。企画の中身が問題というか、例えば、それは住民が求めているの?観光客が求めているの?ニーズはあるの?というところです。
それを捉えてしっかりと優先順位を決めて、その位置づけを明確にする。全体を見据えた上で本当に必要があるのかどうかです。

岩崎: 本当のニーズとその構造的な把握、優先順位の選定。すごく難しいと思いますが。

木村: 例えば、商店街をどうする?という議論が先に立ちますが、それってもっと大事な視点があるのではないでしょうか?商店街をどうする?というのではなく、まち全体をどう設計するのかを考えるべきです。いくらハード整備をしてもそれだけではダメなんです。全体設計がしっかりと行われてないから、地域全体が厳しい状況を脱し得ないと思われます。

岩崎: お客様の視点ですね。

木村: それこそが、関わる皆さんが楽しい「仕組み」を作るための原点ではないでしょうか。お客さん、生活者の視点に立てば全体が見えますし、どの程度の規模、実施主体、そのための計画、どの程度は税収が見込めるのかに繋がっていけそうです。

岩崎: 木村さんは、これらをどのようにやられてきたのでしょうか。「すでに構想があって、網があって、それをつなげていくという(演繹的手法)」のか「具体、具体、具体、とこれをつなげたら面白いという進め方(帰納的手法)」なのか、どうやって企画を推し進めてこられたのですか?

木村: そうですね、すべてが同時平行で、たくさん企画が走ってますし、重なり合っているという感じです。点と点をつなげて、構想(網)も描いているし、全てを交差して効果的に組み合わせているというのが重要といえます。

地域は何が大切かということを小さい頃から体験をもとに学んでいた。

岩崎: 木村さんのモチベーションの原点たるべきところに、テレビで「私はここに生まれてよかったという、愛着心をつけさせること」ということをおっしゃっていましたが。

木村: はい。小樽の小学校5~6年生を対象に、キッズベンチャー塾を開講したことがあります。1チーム5人で一緒にモノづくりを行い、それをどう売るか?ということも考えてもらう取組をしました。
例えば、商品はできたけど、値段はどうする?と地域の大人と一緒に考える。じゃあ、売るんだったらポスターとチラシはどうする?チラシをどこで配る?どこで売る?この一連を地元テレビ局にドキュメント的に追っかけていただき、番組放映をしたところ、ご父兄は感激して涙を流されてました。
また、ケータイを使って、親子で歴史的建造物等を巡るということもやりました。事前に祖父母、父母は研修を受けていますので、ケータイにクイズ形式で問いが来ても安心。
親の博学振りを子供は見て「父ちゃん母ちゃんはすごいな」となる。行ってみると歴史的建造物には、まちの語り部として、おじいちゃんが立っていて、地域の歴史を説明してくれる。「じいちゃんすごいなぁ!」となる。親子三世代の交流。
これは「まちなか産業散歩」という親子交流の例ですが、お金をかけないでもアイデアで色々とできるわけです。愛着心のある人財育成、自分の生まれ育ったまちの違いが分かる人財づくりの一例ですが。

岩崎: 子供時代に地域のことを知れて、大人と関わりながら地域を体感していくというのは素敵ですね。そういう意味で、木村さんご自身は、そういう地域の幼いころの経験はあったのでしょうか。

木村: そうですね。先に述べたような学習体験はありませんでした。住んでる家からちょっと遠くに小樽水族館があったんですが、そこまで行って、魚釣りをして、泳いで遊んでいましたからね。地域は何が大切かということを小さい頃から体験をもとに学んでいたかもしれません。サロマ湖でもキャンプをよくやっていました。秘密の基地づくりをしたり、ほんとによく外で遊びましたね。

岩崎: おらがマチが好きだっていうのはそういうことですね。木村さんが地域活性化に生命を賭けて取り組んでいる原点に触れた気がしました。
最後にもういちど、情熱をテーマに、その地域活性化、地域再生をするというのは木村さんにとってはどういうことなのでしょうか。

木村: 未来に繋がるべく未来を創る人財が近くにたくさんいるのに、それが繋がっていない。それでは非常にもったいない。まず、求められている声を聞き、その声に真剣に向き合って、産業振興を中心として、地域の仕組みづくり、人と人を繋なげていくことが大切です。それが私にとっての地域活性化に取り組む情熱です。

岩崎: ありがとうございました。



対談を終えて

いつも真剣に仕事に取り組み、一瞬たりとも気を抜かない木村さんの仕事のスタンスにはいつも感服しています。

目の前の仕事に真剣に取り組むことでしか未来は見えない。 そして失敗しても、うまくいかなくても、みんなにとっていいことならばやりきろうという強い意思が必要です。それをやり続けることでしか未来を作れない。

あれこれ悩んで結局何も動かない人がいます。あれこれを同時に進めてすべてやりきってしまう人もいます。

木村さんのように、すべてを同時進行でやり続けていくと、新たなつながりが生まれ、想像以上の効果がでてくるようです。情熱を持って仕事を作り上げる大切さをあらためて感じました。

船井総合研究所 岩崎 剛幸

情熱語録 木村 俊昭 氏「ひと(人財)」「仕組み」「モチベーションと評価」 【人とネットワーク】
  • 大切にしている言葉 : 「一期一会!」「初心を忘れるな!」
  • 人を大切に、人脈を大切にする。そのためには、人を好きになることです。
【計画性、仕組みづくりと全体のシステム化】
  • 計画性と仕組みづくりが肝心。全体のシステム化が重要です。
  • 商店街をどうする?という一部を捉えるのではなく、まち全体の設計が大切です。
【人財と評価、モチベーション】
  • 今、地域には、優れた人財・大切な人財を評価する仕組みが不足がちといえます。
  • やはりモチベーションが大切です。自分たちが「地域づくり」に参加しているんだという気持ち、一員なんだということが認識される仕組みづくり、それがモチベーションに繋がるといえます。

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